追憶 

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犬は犬、家族じゃない。

やっぱりそう思う。

 

大切なのは飼い主とペットの信頼関係で、特に犬には必要なことだと思う。

誰が主人なのかをしっかり覚えさせないといけない。

だから叱るときは厳しく叱るし、甘えさえるときは思う存分甘えさせる。

 

小学校1年生の時に雑種犬を飼っていたのだけれど、私が高校2年生の時に、弟(3歳)と祖母が庭で遊んでいるところへ土佐犬が敷地に入りこみ、弟に近寄ってきた。祖母は腰が抜けて動けず声も出ない。そのとき我が家の犬が飛び掛かっていったそうだ。雑種の老犬は土佐犬にぬいぐるみのように振り回されて殺されてしまった。愛犬が飛び掛からなければ、ひょっとしたら弟はこの世にいなかったかもしれない。

 

愛犬が死んでから数か月後、悲しむ私に近所の人が柴犬の子犬をくれたが母が誤って車で引き殺してしまった。もう、犬は飼わない!そう決めた数か月後に近所の人がビーグルをくれたが、心無い人に毒を盛られ殺されてしまった。

 

もう、犬は一生飼わない!

 

犬を引き殺した罪悪感からなのか、供養をしてもらいに行った母に、祈祷師は「前の犬があまり悲しむから成仏できないでいるようだ。そして新しい犬に嫉妬もしているようだ」そんな事を母に告げた。

 

それから数年間、実家を離れたこともあり犬は飼わなかった。結婚し子供ができたのを機会に実家へ戻った。いつの間にか野良犬が住み着いてしまい、なんとなく餌を与えるのだけれど、野良犬は絶対に近寄らず撫でることもできない。いつもふらりと我が家へやってくる野良犬を流れ者の「ながれ」と妻は呼んでいた。

 

やがて「ながれ」は姿を見せなくなり、子供も小学生になったので犬を飼うことにした。「ながれ」のこともありペットショップではなく、犬猫の里親ボランティアを覗いてみた。そこで大人しく座っている犬が目に入った。家族全員での一目惚れだった。

セッターで気が弱く、銃の音に怖がるため猟師に愛想をつかされ捨てられ、野良犬で捕獲されたところを保護したそうだ。その後は何度か里親に出されたが、外で飼うと寂しくて吠えるので戻されたそうだ。年齢は推定5歳くらいだと言っていた。

 

ボランティアの方が、これまでの「出戻り」の経緯を考慮して、1週間ほどホームステイをしてから犬を飼うか検討してください。と言ってくれた。室内で犬を飼うのは初めてで戸惑ったけれど、フィラリアに感染もしていたので看病も兼ねて室内で飼うことにした。ホームステイは無事に終わり、家族も犬もすっかり慣れたので飼うことにした。

 

「ミント」と娘が名付けた。

 

とても甘えん坊で、鼻を上手に使って掌を頭に乗せて撫でてくれとせがむ。

とても食いしん坊で、餌につられて「まて」と「お手、お代わり」をすぐに覚えた。

とても寂しがり屋で妻と娘とミント三人で寝ていた。そのためミントが来てから私は一人で寝るようになった。

 

朝、夕、寝る前に散歩をしていた。田舎なのでリードは付けないけれど、私の後ろをピタリとついて歩いた。穴掘りが大好きで油断して庭に放していると、畑に大きな穴を掘り、口の周りを土だらけにして喜々として戻ってくる。私が親父に怒られ穴を埋めたことは何度もある。 薪ストーブの前で鼾をかきながら、気持ち良さそうに寝るミント。

大人しい犬だと皆から褒められたミント。

 

そんなミントも年老いてきた頃、もうそろそろ歳だろう!今から二匹目を飼っておいた方がいい・・・そう言って貰い手を探していた近所の人が、ミニチュアダックスフントの子犬をくれた。うるさくじゃれる孫(子犬)にミント婆さんは困っていた。

 

ミントは痴呆症になり夜中に俳諧し、失禁やウンコを漏らすことが多くなり、私は精神的に参って叱ってしまい、妻からは「介護できない人なんだね!」って罵られた。

白内障、ガンを患っていたが動物だから自然に命を任せようと決めた。

やせ細り、目は窪み、それでも生きようと食べる姿は、何か別な者が憑依しているようで見つめられると怖かった。やがて食べない日が二日続きミントは逝ってしまった。

 

ミントの生涯は不運だったのか幸せだったのか分からない。

本当に可愛くて利口な犬だった。

最後まで介護できなかった私は飼い主として失格だ。

一生懸命に生きようとしているミントに、酷いことをしたと後悔している。

 

ミント、ごめんなさい(合掌)